コラム

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採用サイト、募集要項と会社案内だけでは応募が増えない理由

  • 採用サイトに載せる要素は、理念・未来像、仕事・成長、人・組織の3つです。
  • これまで私が受けた採用サイトの相談は8件で、そのうち5件は、募集要項を中心に、簡単な会社案内と応募フォームを添えただけの構成でした。
  • 待遇で大手に勝てない会社ほど「人・組織」で差がつきます。そろえるには、社員10名の取材と撮影で丸1日以上の工数がかかりました。

採用サイトを作るか、今の採用ページを見直すか。何年も採用計画に届かず、求人媒体に出しても反応がないまま、社長からは結果を求められている。それでも、何を載せればよいのかを判断する材料がない。この記事は、総務や人事と兼務で採用を担当している、こうした状況の方に向けて書いています。

私がこれまでに受けた採用サイトのご相談は8件です。そのうち5件は、すでにある採用ページが、募集要項を中心に、簡単な会社案内と応募フォームを添えただけの構成でした。

それを見たとき、私は『求職者から見ると、応募する動機としては弱いのでは』と感じました。いくつかの会社を転職してきた身としては、もっと情報を見たうえで、応募するかどうかを判断したいのです。

募集要項以外の情報が薄くなるのは、担当の方の努力が足りないからではありません。何を載せれば応募につながるのか、判断する材料がなかっただけです。この記事では、採用サイトに載せる要素を3つに分け、どれが抜け落ちやすく、そろえるのにどれくらいの手間がかかるのかを、社長に説明できる形でまとめます。

募集要項だけの採用サイトに足りないもの

募集要項に会社案内と応募フォームを添えれば採用サイトとして足りる、という考え方はよく見かけます。条件も会社の情報も応募の窓口もそろっているので、形としては整っています。

ただ、募集要項に書けるのは、給与、休日、勤務地、仕事内容といった条件です。条件は求人媒体にも同じものが載っています。会社案内があっても、中身が簡単なものにとどまっていれば、求職者が応募を決める理由にはなりません。求人媒体で反応がなかった会社が、同じ情報を自社のサイトに移しても、求職者が新しく知ることはほとんどありません。

条件を並べて比べられると、地方の中小企業は不利です。給与や休日の数字で大手や都市部の企業を上回るのは難しく、同じ条件表をもう一つ置いても、比べられる場所が増えるだけです。

求職者が採用サイトを開くのは、求人媒体などで社名を知ったあと、その会社で働く自分を確かめたいときです。採用サイトは求人情報を置く場所ではなく、求職者が入社後の自分を想像するための材料を置く場所です。そう考えると、載せるものが変わってきます。

採用サイトに載せる3つの要素とは?

採用サイトに載せる要素は、A:理念・未来像、B:仕事・成長、C:人・組織の3つです。

要素求職者が知りたいこと載せるものの例
A 理念・未来像この会社は何のためにあり、どこへ向かうのか会社の使命、中長期の目標、求める人物像
B 仕事・成長入社したら何を任され、どう育つのか業務内容の詳しい説明、入社後のキャリアの道筋、研修制度
C 人・組織どんな人たちと、どんな雰囲気で働くのか社員インタビュー、座談会、ある1日の流れ、職場の写真や動画

この3つの区分は、徳島県の「企業等採用活動支援事業補助金」の交付要綱でも、採用情報を発信する媒体に含める要素として定められています[1]。表の「載せるものの例」も、要綱が挙げている例を短く言い換えたものです。

ただし、ここで紹介したいのは補助金の要件ではありません。求職者は、Aで会社の行き先を知り、Bで自分の役割を思い描き、Cで「この人たちと働けるか」を確かめます。3つのどれかが欠けると、入社後の自分を想像するための材料がそこで途切れます。補助金を使うかどうかにかかわらず、自社の採用ページを点検するものさしとして使えます。

いちばん抜け落ちるのは「人・組織」

AとBは、社長の話や既存の会社案内、仕事内容の説明をもとに、文章として用意できます。Cだけは、社員に話を聞き、写真を撮らなければ材料がそろいません。

この差が、Cが抜け落ちる理由になっています。取材と撮影は、手元にある文章をページに流し込むよりも手間がかかります。同じ予算なら、ページ数を増やしたほうが、完成したときに「作った」という手応えが出やすい。その結果、ページは多いのに、働いている人の顔と声がどこにもない採用サイトができあがります。

この記事で伝えたいことは1つです。求職者が「ここで自分は成長できる」と想像できるかどうかは、社員のリアルな声と素顔の写真があるかで決まります。Bに成長の道筋を丁寧に書いても、その道を実際に歩いている先輩の言葉と顔がなければ、会社の説明のひとつとして読まれて終わります。

「人・組織」をそろえるのに何時間かかるか

では、Cをそろえるにはどれくらいの手間がかかるのか。私が立ち会った採用サイトのための社員取材と撮影は次のとおりでした。

作業工数
取材社員10名 × 1人あたり1時間(計10時間)
撮影8時間、写真200点
体制カメラマンと立ち会いの2人
原稿化この案件ではお客さま側が担当

取材と撮影だけで、丸1日以上の工数がかかります。社員の皆さんにも、1人1時間ずつ仕事の手を止めてもらうことになります。

社長に相談するときは、この工数を先に見せてください。手間の大きさを伏せたまま進めると、予算や日程が厳しくなった段階で取材が削られ、Cのない採用サイトに戻ってしまいます。

取材を前提にすると、外注先の選び方が変わる

Cをそろえる採用サイトには、取材と撮影が必ず含まれます。外注先を選ぶときは、デザインの好みやページ数を比べる前に、見積もりに取材と撮影が入っているかを確かめてください。

原稿をだれが書くかも、先に決めておく必要があります。取材した内容の原稿化は、外部のライターに依頼することが多いのですが、社内で書く選択肢もあります。上の案件でも、原稿はお客さま側で書いていただきました。社内で書く場合は、外注の費用は下がる一方で、担当の方の作業時間が増えます。

もう一つの基準は、何度も足を運べる距離にいるかどうかです。社員の声は、一度の取材で集めきれるとは限りません。繁忙期を避けて日を改める、写真を撮り直す、別の社員に話を聞く。そのたびに移動の時間と費用がかかるので、距離が遠いほど訪問の回数は減り、Cの情報は薄くなりやすくなります。

取材した素材は、紙のパンフレットにも使い回せる

取材で集めた社員の声と写真は、採用サイトだけでなく、会社説明会や学校訪問で配る紙のパンフレットにも使えます。採用サイトのためだけの費用として見ると、取材と撮影は高く見えます。紙の媒体と合わせて使うなら、一度の取材が、その年の採用活動全体で使える資産になります。

社員の声を載せても、結局は給与と休日で選ばれるのでは?

給与と休日で大手や都市部の企業に勝てる会社であれば、そのとおりです。条件を載せるだけで応募が集まる会社には、この記事は必要ありません。まずは条件を目立たせるほうが先です。

この記事の考え方が当てはまるのは、待遇面で大手や都市部の企業に勝てない地方の中小企業です。給与や休日は数字で並べられるので、差がはっきり出ます。一方で、どんな人と働くか、どう育ててもらえるかは数字で比べられず、自社にしか書けません。条件の比べ合いで負ける会社が、比べられる場所を変えられるのが、Cの情報です。

加えて、待遇だけを理由に入社した人は、よりよい待遇が見つかれば、同じ理由で辞めていきます。何年も採用計画に届いていない会社にとっては、応募の数と同じくらい、採用できた人に長く働いてもらえるかが重い問題のはずです。

『この会社で働けたら、自分はどう変われるのか』。これを求職者に伝えられるかどうかが、自社の魅力の伝わり方を左右し、採用のブランディングにもつながると私は考えています。

まず自社の採用ページをチェックする

  1. 自社の採用ページを開き、載っている情報に、A:理念・未来像、B:仕事・成長、C:人・組織のどれに当たるか印をつけてください。
  2. Cの印がひとつもなければ、取材をお願いしたい社員を3名選び、名前を書き出してください。
  3. この記事の工数の表を添えて、社長に採用サイトの見直しを相談してください。

1と2の結果と、この記事の3つの要素の表、工数の表は、社長に見直しの必要性と費用の根拠を説明するときに、そのまま使えます。

カワセミデザイン舎では、取材と撮影を含めた採用サイトの制作をお受けしています。自社の採用ページに何が足りないかを一緒に確かめたい場合は、お気軽にご相談ください。

出典

  1. 徳島県「企業等採用活動支援事業補助金交付要綱」別表(第8条第3項関係)https://www.pref.tokushima.lg.jp/file/attachment/1062682.pdf

    (2026-10-30 確認)

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