“一体感”から考える、これからのチームビルディングとリーダーに求められること

先日、興味深いインタビュー記事を拝読しました。

元サッカー日本代表監督の岡田武史さんが、スポーツ界での経験から“一体感”に対する考え方と、これからのリーダーに求められることについて語っています。

https://type.jp/et/feature/26204

俺は20人、30人規模のチームをたくさん作ってきたけれど、「全員が仲良し」なんてことは1回もなかった。

引用元 https://type.jp/et/feature/26204/

これはなかなか衝撃的です。しかし、ご存知の通り岡田さんは成功しています。

この中で岡田さんが強調しているのは、全員が仲良くなることが目的ではなく、一体感は共通目標を目指した結果として生まれるべきものだということです。これは、ビジネスや組織運営の場でも非常に重要な視点であり、リーダーシップを考える上で大いに参考になるのではないでしょうか?

ちなみにこの話は、過去にも何度かお話されています。そして毎回、胸を打たれています。

本記事では岡田さんの発言を元に、一体感やリーダーシップについて考えましょう。

岡田武史さんの“一体感”について考える

インタビューで岡田さんは「一体感そのものを目的にしてはいけない」と警告しています。一体感はチームの成功に不可欠な要素ですが、それ自体を目的にしてしまうと逆効果だというのです。

一体感を強調しすぎることのデメリット

初めから「一体感をもって〜」「一丸となって〜」と言うと、それが目的になりがちです。そうなると、そもそもチームの目標が曖昧になり、なんのためにその作業をしているのがわからなくなります。また、一体感を意識するあまり『ここで変なことを言うと議論の邪魔になるかもしれない』と意見を言わなくこともあります。

「うちのスタッフ、言ったことしかやらないし、意見も言わないんだよね…」「社員の主体性がないんだよ…」とぼやいている方、心当たりありませんか?

一体感は手段、手段と目的の混同を避ける

岡田さんの発言のポイントは、一体感を目的とするのではなく、手段として活用することです。そのためには、ビジネスや組織運営の場で、チームの目標達成に向けてどのように一体感を形成するのがよいのか、考えてみましょう。

ビジョンと目標の明確化

まずは、チームのビジョンと共通の目標を明確にすることから始めてみましょう。記事では『ワールドカップでベスト4進出』でした。

ビジネスにおいては、一体感を過度に強調するのではなく、プロジェクトの成功や売上目標の達成といった具体的な目的を第一に考えるべきでしょう。一体感は、あくまでその目的を達成するための手段であることを忘れてはいけません。目的が明確であり、それに向けた具体的な計画と行動があるとき、チームは自然と一体感を持ち、連携して成果を出すことができます。

コミュニケーションとフィードバックの重視

岡田さんは別の記事で次のように発言しています。

僕がよくしているのは、例えば野外体験に連れて行って、キャンプをしたり、バーベキューをしたり。チームメンバーでサッカー以外のことをして、見たことのない側面を見る機会をつくります。

引用元 https://newspicks.com/news/8251760/body/

このように、チームメンバーが同じ方向を向き、共通の目標を達成するためには、定期的なミーティングはもちろん、気軽で透明なコミュニケーションが必要です。情報の共有や進捗の確認だけでなく、メンバー間の信頼を深める機会にもなります。これにより、全員が目標に対する理解を深め、一致団結して取り組むことができます。

加えて、フィードバックを重視することも重要です。メンバー同士のフィードバックを促すことで、チーム全体が学び合い、成長する環境を作ることができます。オープンなフィードバック文化を育むことで、各メンバーの強みと改善点が明確になり、個々のスキル向上とチーム全体のパフォーマンス向上に繋がります。

不確実な時代に求められるリーダー像とは

また、岡田さんは「キャプテンシーとリーダーシップの違い」という形で、従来型のリーダーシップを否定しています。岡田さんの言うキャプテンシーとは、メンバーと共に歩むリーダーシップの形であり、現代のチームビルディングでは特に重要とされています。

従来型リーダーシップの限界を認識する

リーダーシップというと、リーダーが前面に立ち指示を出すトップダウンのスタイルが主流でしたが、今では問題も指摘されています。メンバーの主体性や創造性を抑え、チーム全体の成長や柔軟な対応力が欠ける場合が多いです。また、リーダー一人に負荷が集中しやすく、効率的な意思決定が難しくなることもあります。現代のビジネス環境では、分散型リーダーシップが求められチームのエンゲージメントを重視する場面が増えてきています。

分散型リーダーシップとは

分散型リーダーシップは、リーダーの役割をチーム全体で共有し、メンバーそれぞれがリーダーシップを発揮するスタイルです。メンバー全員が積極的に参加し、役割や責任を分担することでチーム全体の力を引き出します。柔軟性と迅速な意思決定を可能にし、変化の激しい環境に適応しやすくなります。

また、メンバーが主体的に考え行動することで、創造性やイノベーションの促進が期待されます。従来のトップダウン型リーダーシップに比べて、個々のスキルや強みを活かしやすく、コミュニケーションが活発になり、チームの一体感や協力体制が強化される点も大きな利点です。

この場合、コミュニケーション能力が高い人・信頼される人・柔軟性と適応力のある人・問題解決能力の高い人などが、チームのまとめ役になることが多いです。長谷部誠さんとか。

分散型リーダーシップにも弱点があります

分散型リーダーシップの弱点は、決定の遅れや責任の所在が不明確になることです。また、全員の意見を取り入れすぎると方向性がぼやけ、効率が低下する可能性があります。スピーディな判断が必要な場合は、従来型リーダーシップが効果的です。使い分けですね。

効果的なチームビルディングのためのアプローチ

それでは、今の時代にあったチームビルディングのためにどのようなことをすればいいのか、考えてみましょう。

  1. 目標設定と達成のプロセスを明確にする: チームの全員が共通のビジョンを持ち、目標を理解し、そのためには各々が具体的になにをすべきか、アクションプランを持つことが重要です。
  2. チーム全体のエンゲージメント: メンバー全員が自分の役割を理解し、主体的に貢献できるようにするためのエンゲージメント施策を導入します(例えば、ワークショップ・ブレインストーミングセッションなど)。
  3. 協力的なリーダーシップ: チームのまとめ役はメンバーと一緒に考え、彼らの意見やアイデアを積極的に取り入れます。これにより、メンバーは自分の役割に責任を持ち、主体的に行動するようになります。
  4. 定期的な評価とフィードバック: チームの進捗を定期的に評価し、必要に応じて軌道修正を行います。また、メンバー間でのフィードバックを奨励し、相互に納得するまで話し合って改善点を共有します。
  5. メンバーのエンパワーメント: メンバーが自分の意見を自由に表現できる環境を作り、彼らのアイデアを尊重し、実行に移します。

これらのアプローチを通じて、チーム全体のエンゲージメントを高め、効果的なチームビルディングを実現しましょう。

変化に対応できるチームビルディングを目指そう!

とても示唆に富んだインタビュー記事でした。私も常々、一体感を強調する組織に対して違和感を感じていましたので、多くの部分で共感しました。

岡田武史さんの発言をビジネスに応用することで、チームの一体感を高め、成功へと導くことができるのではないでしょうか?まずは、チーム全員が共通の目標に向かって進むための、具体的なステップを踏み出しましょう。

『あいつは何でもストレートに発言するからチームの和が乱れるだよ…』と思っても、居酒屋なんかで呑みながら真意を聞いてみると「チームの未来を考えてのことだったんですよ〜」と教えてくれたりして、実はいい奴だったとわかることもありますよね。よね?みんな未来を良くしたいという想いは同じだと思いますよ。